アップルとクアルコムの和解、真の狙いは


16日付でアップルとクアルコムの訴訟合戦が一段落、和解することとなった。スマートフォンの技術革新に関するロイヤリティを巡る係争が決着し、クアルコムからアップルへの複数年のチップセット供給、アップルからクアルコムへの金銭の支払いに関する合意が得られたようだ。今回の発表を受け、クアルコム株は23%近い伸びを見せたがアップルの株価は殆ど影響を受けなかった。

 

株価だけ見るとクアルコムの勝利のように見えるが、元々財政面的にはクアルコムは大打撃を被っており、通期決算ではアップルによる訴訟以前の実績と比べ33%ほど減少している。1-3月期及び今期以降どうなるかが見物となる。

さて、今回のアップルとクアルコムの和解だが、クアルコムは第五世代(5G)通信においては先端企業であり、次世代iPhone等に組み込みたいアップルとしては和解せざるを得なかった、という見方が出来る。アップルは現在インテルのモデムチップを採用しているが、その性能はクアルコム製の物に比べて劣ると言われており、この問題に対処するための和解だったと言える。
また、インテルはその製造能力の限界から採算能力のひくいモデムから撤退する動きを見せており、より売上の大きなパソコン事業に注力するようだ。現在主力のパソコン事業も製造プロセスにおいてライバル企業のAMDに差を付けられており、また販売割合においても迫られている。CPUの供給も十分ではない状況であるインテルにとって、やむを得ない判断であり、正しい判断だろう。故に、今回の和解となったのは当然の帰結とも言える。

アップルとしては、ライバル企業であるサムスン電子とファーウェイが今年中に5G対応スマートフォンを出荷すると明言している以上、これ以上のロスは許されない、といったところだろう。市場としての判断はクアルコムの勝利かもしれないが、大規模な自社株買いを行っており発行済み株式数が20%近く減っていることは見逃すことは出来ない。


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