CPUの冷却とエアフローについて


近年、モバイルデバイスの進化により、デスクトップPCは高レベルな処理やゲーミングを中心に用いられるようになってきました。
CPUは多コア化を続け、複雑な処理や映像の処理はGPUによって処理されるよう進化しています。
そこで問題になってくるのはやはり熱問題であり、それが原因となって熱暴走や処理能力の低下が引き起こされてしまいます。
今回は多大な熱を発生させてしまうPC内部のエアフロー等を見直していきます。

 

基本的なデスクトップPCのエアフロー

基本的な空気の流れは以下のようになると思います。
なっていなければ少々問題のある可能性があります。


矢印は風の流れを表している。

フロントの吸入ファン、あるいは吸入口より外気を取り込み、CPUやGPUを冷却、背面や上面のファンから排熱します。最近はマザーボード自体が温度に応じてファンをPWM等でコントロールし、静音化や省電化出来るようになっています。
通常の使用、例えばオフィスを使用した業務、一般的なWebブラウジング程度であれば特に大きな電力は使用しませんから、強力なファンを含む冷却システムは必要無いかと思います。

しかし、映像編集やゲーミング、解析、シミュレーションするとなれば話は別です。
これは大量の電力を消費し、それによって熱の発生も多大なものとなります。並列処理を行う事が殆どであり、これにはCPUよりも元々は映像を処理するためのGPUの方が向いています。
GPUコンピューティングの登場によって、数値計算のアプリケーションの部分をGPUに領域開放し残りのコードがCPUで作動するようなったため、比較的小規模なチームや個人でも研究開発が加速しました。
が、やはり熱が大量に出ることが問題です。GPUが大量の電力を消費することにより熱が発生、その熱量は”肉が焼ける”などとも表現される程です。
勿論、GPU自体はその熱に耐えられるよう設計されているので壊れはしませんが、排気される熱はPC内部に籠もりがちです。

 

GPUの熱をCPUファンが吸い上げてしまう

するとどうなるか、PCケースは密閉性の高いので以下のようになります。

筆者のGPUは特に熱いと言われるAMDのRadeon RX-590です。
消費電力は225W、平常時はクロックをダウンさせ、過熱しないようになっていますが、4Kでゲームをしたり映像や3Dモデルのレンダリングを行うと猛烈な熱が発生し、冷却用のファンが全力で回転します。
この際、CPUを強力に冷却するファンが逆に問題となります。GPUの排出する熱を吸い上げてしまうのです。外気を取り込んでCPUを冷却できれば問題ありませんが、GPUから廃棄された熱を吸い込んでしまうと冷却性能が下がります。

具体的にCPU IDのHWMonitorを使って測定してみます。
この際、CPUとGPUに可能な限り負荷を掛けるためにBIO HAZARD RE:2を4K解像度にて可能な限り高設定とし、連続して1時間ほどプレイした結果が以下となります。

CPU温度 67℃
マザーボード温度 48℃
GPU温度 85℃

 

スクリーンショットを撮りそびれたのですが、予想通りかなりの熱量となっています。
CPU温度は70度に到達するかと思いましたが、使用しているCPUクーラー虎徹Ⅱと排気ファンがかなり頑張ってくれたようです。
CPUはちょっと古いFX-8150が現役です、Ryzenの方が良いと勿論分かっているのですが、丁寧に整備しているからか全く壊れず、また処理能力も問題無いので買い換えておりません……
話が逸れました、このCPUは最大で125Wとかなりの熱を出しますが、虎徹Ⅱのおかげで十分冷えています。平常時の使用であれば30~40度程度で収まっている事を考えると、高負荷時の温度上昇はなかなかです。メーカーの最大温度公称値は61度となっているため、少々怖いものがあります。
勿論、すぐに壊れはしませんが。

 

CPUに冷えた外気を取り込む方法を考えてみる

ではGPUからの排熱をCPUファンが給気しないようするにはどうしたら良いか、実は簡単で吸気のためのダクトを設置すれば良いのです。
以前はそういった商品があったのですが、近年の省電力化によって発熱が抑えられるようになってきたからか全く見かけなくなってしまいました。
よって、自作し設置してみます。

帯電防止のアクリル板があったので、簡易に作成してみました。
見た目は余り良くありませんが、CPU真下のGPUからの排熱は可能な限り吸い込まないようなったと思います。
パネルを閉じ、同じ条件で温度変化を測定します。
尚、両方の測定は室温24度にて測定しております。


簡易に作った物でしたが、かなりの温度低下が望めました。
具体的にはCPUは最高温度61度、マザーボードは39度、GPUは80度となりました。
CPUの温度しか変化しないかと思いましたが、マザーボードとGPUの温度も下がったことは意外です。この温度であれば、一応AMDの公称値に納まります。10%の温度低下を手軽にのぞめるとは思っていませんでした。
3Dプリンタを使って、ファンにもっと密閉性の高いダクトを作成しを設置するのも面白そうです。

 

これから熱くなるので、見直しは重要

勿論、CPUファン、排気ファンを強力な物にすれば更に冷却性能の向上を望めます。
しかし、デスクトップPCは身近に置いて使用するものであり、静音化も必要なものと考えます。
そうなると、エアフローの見直しは最も手軽に行う事の出来るPC整備ではないでしょうか。これから暑くなってきますから、PCが壊れないようにする為にもファンや内部の清掃と一緒にやっておくと良いでしょう。

なお、このAntec製のケースは密閉性が高く、エアフローが良ければ良いほど内部にホコリが溜まりやすくなってしまいます。
幸いこのモデルは全面が完全に閉じるタイプな上、基本的にディスクドライブは非搭載、5インチベイはエアフロー改善のために開け放ってありますのでフィルタを貼ることにしました。


これにはエアコン用のホコリフィルターを使用しました。
ホームセンター等で数百円で購入出来ますし、かなりホコリの侵入を防いでくれます。

仕事で忙しい時期程PCは壊れやすいと言われますが、これは普段よりも高負荷が掛かることで熱によって壊れることが殆どのようです。
冷却を見直し、PCを快適に長く使いたいものです。


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